建設業許可を個人事業主(一人親方のまま)で取得するには?
個人事業主(一人親方のまま)でも建設業許可は取得できるのか?
結論から申し上げると、個人事業主(一人親方のまま)でも建設業許可の取得は可能です。
1件の請負金額が500万円(消費税込み)以上の建設工事を請け負うには、法人でも個人事業主でも建設業許可が必要になります。
上記の金額は材料費も含みますので、ちょっとした工事であれば500万円以上になってしまうのではないでしょうか?
この記事を読んで頂いている方のなかには、
「うちは500万以下の工事しか請け負わないから」
という方もいると思いますが、最近は、
「元請会社から許可の取得を求められている」
「同業他社の多くが許可を取得してきた」
「発注者やお客様へのPRにもなる」
などの理由から500万以下の工事しか請け負わない方でも建設業許可を取得するケースが増えてきております。
国土交通省の平成31年度3月末時点での調査結果によると、全国で建設業許可業者数は468,311業者ありますが、そのうち個人事業主は77,201業者(16.5%)となっております。
この調査結果からも、個人事業主で建設業許可を取得することは可能なことがわかります。
このページでは、建設業許可を個人事業主(一人親方のまま)で取得するためのメリットやデメリット、経営業務管理責任者や専任技術者になるための条件や必要書類について解説いたします。
- INDEX
- 個人事業主で建設業許可を取得するメリット
- 個人事業主で建設業許可を取得するデメリット
- 経営業務の管理責任者となるための条件と必要書類
- 専任技術者となるための条件と必要書類
- ワンポイントアドバイス
個人事業主で建設業許可を取得するメリット
- 500万円以上の工事や公共工事が受注できるようになる。
- 売上増加や新規顧客の獲得に繋がる。
- 元請会社や一般顧客(施主)からの信用度が増す。
- 許可を取得していない同業他社への差別化にもなる。
- 許可取得時の申請書類が法人に比べて少ない。
- 法人成りする予定がなければ、申請する際に用意する書類が法人に比べて少ないので比較的短時間での取得が可能になる。
個人事業主で建設業許可を取得するデメリット
- 法人成り(会社組織に変更する)する際、新たに許可を取得しなければならない。
- 許可番号が変わるので、取引先への案内や許可票看板やホームページ、名刺などの変更も必要になります。
- 許可取得者(通常は個人事業主本人)が死亡した場合等、許可を引き継ぐことはできない。
- 事業継承が法人に比べて難しい。
- 法人に比べて優秀な人材(国家資格保有者や実務経験者など)が集めにくい。
- 社会保険体制や就業規則等から法人を選ぶ人の方が多い。
個人事業主(一人親方のまま)で建設業許可を取得する際は、上記のようなデメリットについても考慮しておくことが重要となります。
経営業務の管理責任者となるための条件と必要書類
経営業務の管理責任者(略して「経管(ケイカン)」と呼ばれています)とは、営業所において、営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、建設業の経営業務について総合的に管理し、執行した経験がある者(個人事業主や法人の役員など)をいいます。
個人事業主の場合は、本人又は支配人(ほとんど無いケースです)のうち1人が、下記のどちらかに該当しなければなりません。
- ①取得しようとする建設業業種に関する経営経験が5年以上あること。
- 証明するには、5年分の確定申告書の写し(原本提示)と5年分の工事請負契約書、注文書、請求書等が必要です。(請求書の場合は、入金を証明する通帳なども必要)
- ②取得しようとする建設業業種以外の業種に関する経営経験が6年以上あること。
- 証明するには、6年分の確定申告書の写し(原本提示)と6年分の工事請負契約書、注文書、請求書等が必要です。(請求書の場合は、入金を証明する通帳なども必要)
多くの方は①の『取得しようとする建設業業種に関する経営経験が5年以上あること』の条件を満たす必要書類を用意して、経営業務の管理責任者になります。
専任技術者となるための条件と必要書類
専任技術者(略して「専技(センギ)」と呼ばれています)とは、営業所に常勤して、その業務に従事する専門的な知識や経験を持つ者をいいます。
建設業許可を受けるためには、取得しようとする申請許可業種について一定の要件を満たした専任技術者を、営業所ごとに配置しなければなりません。
専任技術者の要件は一般建設業と特定建設業で異なりますのでご注意下さい。
(関連:一般建設業と特定建設業の違いについて)
一般建設業の場合
一般建設業の場合は、以下の①~③のいずれかに該当しなければなりません。
- ①許可を受けようとする業種について、高校(旧実業高校を含む)指定学科卒業後、5年以上大学(高等専門学校・旧専門学校を含む)指定学科卒業後、3年以上の実務経験を有する者
- 証明するには、卒業証明書+実務経験期間分の工事請負契約書、注文書、請求書等が必要です。(請求書の場合は、入金を証明する通帳なども必要)
- ②許可を受けようとする業種について10年以上の実務経験を有する者(学歴・資格の有無を問わない)
- 証明するには、実務経験期間分の工事請負契約書、注文書、請求書等が必要です。(請求書の場合は、入金を証明する通帳なども必要)
- ③許可を受けようとする業種に関して定めた国家資格等(例:二級建築士)を有する者。
- 証明するには、保有国家資格の合格証明書など(原本提示)
特定建設業の場合
特定建設業の場合は、以下の①~③のいずれかに該当しなければなりません。
- ①許可を受けようとする業種に関して定めた国家資格等(例:一級建築施工管理技士)を有する者。
- 証明するには、保有国家資格の合格証明書など(原本提示)
- ②一般建設業の要件①~③のいずれかに該当し、かつ元請として4,500万円以上(消費税込)の工事について2年以上指導監督的な実務経験を有する者
- 証明するには、実務経験期間分の工事請負契約書が必要です。(原本提示)
- ③国土交通大臣が、①又は②に掲げる者と同等以上の能力を有すると認めた者
- これは、以前に実施されていた特別認定講習及び考査に合格した人が該当しますが、現在は実施されておりませんので、上記の①もしくは②で要件を満たす必要があります。
ワンポイントアドバイス
建設業許可を申請するには、上記でご説明した人的要件(経営業務の管理責任者と専任技術者が必要)の他に、
- 財産的要件(一般建設業の場合、自己資本500万円以上あること)
- 営業所要件(独立した営業所であること)
- 欠格要件に該当しないこと
がありますが、一番のポイントは人的要件がクリアーできるかどうかです。
さらに言うと、上記でご説明した証明書類(証明期間分の確定申告書・原本と工事請負契約書、注文書、請求書等(請求書の場合は、入金を証明する通帳なども必要)が用意できるかどうかです。
申請する相手は役所で、書面審査になります。
いくら「俺は高校卒業後、この道一筋20年やってきている」と言っても書面が無ければ認めてくれません。
私は今までに数度、都庁・建設業課の申請窓口で、職員とやりあっている方を見たことがあります。
当事務所にご相談される方でも、証明書類が用意できず(見つからず)に申請を断念される方も多いです。
現在、個人事業主で活動されている方で、すぐに建設業許可を取得する予定がなくても確定申告書・原本や工事請負契約書、注文書などは廃棄せずに保管しておくことをお薦めします。
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